平成27年度第2学期始業式 校長式辞

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 30日余の夏季休業を終え、今日から第2学期を迎えることになりました。夏季休業中、部活動、夏季補講、就職・進学準備などに集中して取り組んだ生徒諸君にとっては、充実した期間であったことと思います。中でも、先ほど御紹介しました綱引競技につきましては、本来自分の属する部活動の厳しい練習に加え、学校からの働きかけに応じて練習から本番の和歌山国体当日まで大変良く頑張ってくれました。部活の練習後の19時から21時までの第五小学校体育館での練習、試合当日は早朝に学校を出発し試合を終えて日を跨いでの帰校と強行軍でした。結果も公開競技初年度、第3位という大変素晴らしいものでした。10人の選手諸君と指導をしてくださった教職員の皆様にお礼を申し上げます。
 さて、ここから2学期に向けてのお話をします。いつもの式辞と異なり少し深刻な話題となります。数字や年数を意識して聞いてください。生徒諸君が40歳前後になるころまでの話です。また年数を数えやすくするために西暦でお話しします。
 日本の人口が減少期に入っていることが、いろいろな機会に話題になっています。中でも『中央公論』という月刊誌の2013年12月号、2014年6月号、7月号などに日本創成会議議長の増田寛也氏が発表した論文は、衝撃的な内容でした。この内容は、加筆され『地方消滅』という書名で新書として刊行されています。そこでは人口減少について以下のように整理しています。ある研究団体の推計値を基に、今後も東京・大阪などの大都市への人口の移動(主として若者の移動)が収まらなかった場合には、2010年から2040年までの30年間に出産可能な「20歳から39歳までの女性の人口」が50%以下に減少する市区町村数は、896自治体、全自治体の49.8%、約半分にのぼる。現在ある自治体の約半分が、このままいくと30年間で急激な人口減少に遭遇することになる。このうち2040年、25年後に人口が1万人を切る市町村は、523自治体と推定され全体の29.1%にのぼり、このままでは自治体としては消滅する可能性が高いとしています。
19歳以下でも40歳以上でももちろん出産は可能ですが、生まれる子供の95%は20~39歳の女性によるものであることから、統計処理上出産可能な年齢を「20歳から39歳まで」としたものです。いずれにせよこの世代の女性が大きく減少しては、出生率が少々上がっても人口減少を食い止めることはできず、当面人口減少が緩やかなのは、老人人口がある時期まで増加することによるものです。
 日本は、2008年をピークに人口減少に転じ2010年に1億2806万人であった総人口が、2050年には9708万人(3098万人減)に減少し、増加傾向にあった65歳以上の老人人口も2040年を境に減少に転じることになります。14歳以下の年少人口と15歳から64歳までの生産人口もすでに減少を続けており、2040年以降は年少、生産、老人全ての年齢層で減少が進むため、総人口の減少は急速化します。
 このように継続的に人口が減少する社会においては、生き方、働き方も大きく変化していくことが考えられますが、どのように変化するかは予測しがたいものがあります。
 また、全く別の資料からも今後10年から20年後の社会の大きな変化をうかがうことができます。これもまたすでに新聞や雑誌などで紹介され、最近では今年の2月17日に文科省の産業競争力会議雇用・人材・教育グループワーク(第4回)に提出された資料でも引用されているものです。
 一つは東京大学大学院教授の山内祐平氏が自身の研究室ブログで「いまは存在しない職業への準備―『21世紀型スキル』」の中で次のように述べているものです。「米デューク大学の研究者であるキャシー・デビッドソン氏が2011年8月、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビュで語った予測が波紋を読んでいる。『2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう』というのである。情報化が進むに従って、われわれの働き方は大きく変わってきている。例えば、10年前には『情報セキュリティマネージャー』などという職業はなかった。企業が技術革新を進めるたびに新しい職業が生まれている。65%という数字は米国を対象とした予測であり、日本でも同じようになるかはわからない。ただ、国際化が進む世界では一つの国で起こった変化が他の国に瞬く間に広がる。若者の雇用不安が世界的現象になっているのはそのためだ。」
 二つ目は『週刊現代』2014年11月1日号の「賢者の知恵」というコーナーで紹介された、英オックスフォード大学で人工知能を研究しているマイケル・A・オズボーン准教授の『雇用の未来―コンピュータ化によって仕事は失われるか』という論文の内容です。この論文では、アメリカの702の職種すべてについて、コンピュータに取って代わられる確率を詳細に試算したことです。いうなれば、これから「消える職業」「なくなる職業」を示したことになります。具体的には、コンピュータ化の障害となるような9の仕事の特性を抽出して…例えば、手先の器用さ、芸術的な能力、交渉力、説得力など…702の職種を分析評価したものです。その結果、今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化される(機械に取って代わられる)リスクが高いと結論づけています。このことは、最近テレビ等でよく宣伝している自動車の自動操縦などよい例でしょう。また、ロボット技術の急速な進歩からも説得力のある主張です。
 これらの予想がどこまで正しいのかわかりませんが、コンピュータ化やロボットの普及、グローバル化の進行は食い止めることができない世の中では、全く無関係と言っていられないと思います。
 人口減少による社会の変化にせよ技術の革新による社会や仕事の変化にせよいずれも10年から20年後、生徒諸君が働き盛りを迎える頃に遭遇するであろう近い将来の予測です。国立教育政策研究所のプロジェクト研究である「教育課程の編成に関する基礎的研究」の平成24年度報告書では、こうした将来を生き抜くために「21世紀型能力」を提案しています。具体的には、「思考力」を中核として、それを支える「基礎力」、その使い方を方向付ける「実践力」という三つの力で構成される能力とされています。日々の学校生活に置き換えれば、授業に真剣に取り組み、読書をすることで知識や思考を深め、部活を通じて気力や体力を養うことが「基礎力」の充実に相当するでしょう。本校の指導上の重点の「基礎・基本の充実」のことと言ってもよいでしょう。授業や、部活動、進路等多様な場面での先生方からの指導を基に自分でどのように取り組むか、どのように判断していくか、指導を受けたことについてはその先さらにどうすべきか自分の生き方を考え、目指す方向を見定めていくことが「思考力」に対応するでしょう。これらのことを踏まえて、積極的に行動に移す(活動をする)ことが「実践力」となるでしょう。学校で授業や部活動などの時間に指導を受けるという受け身の在り方から、指導のあったことに対して生徒諸君が自ら考え意欲的に取り組む姿勢へと、学校生活の在り様を変えていくことを期待しています。具体的には、どのようにすればよいのか各自で考え、漫然と日々を送ることなく毎日課題を持って生活してください。授業や部活動を中心とする学校生活の中で、「分かった(理解できた)」という段階から「できた(実行できる)」という段階にまで、自分を高めていくことを望みます。予測のできない今後の社会の変動の中をしっかり生き抜いていくために、今から意識して基礎力を基に思考力・判断力を駆使して、実践力を高めることを願っています。
                         平成27年8月31日  校長 吉永 清貴